近年、ビジネスにおけるドローンの活用は広がる一方ですが、それと同時に法律や規制も複雑化しています。特定飛行の中に、「緊急用務空域」に関するルールがありますが今回はこの解説をしたいと思います。

「緊急用務空域」とは

人命救助や災害対応に関わる緊急用務空域での飛行は、通常のルールとは全く異なります。

災害時に捜索、救助等活動のため緊急用務を行う航空機の活動が想定される場合に、ドローン・ラジコン機等の飛行が原則禁止される『緊急用務空域』が指定されます。(100g 以上の無人航空機に限らず、すべての機体が対象です)

引用:国交省ホームページ

「緊急用務空域」の確認方法

国土交通大臣がその都度『緊急用務空域』を指定し、航空局ホームページ、Xにて周知されます。

「緊急用務空域」の確認義務

ドローンの操縦者は、飛行開始前に、飛行させる空域が「緊急用務空域」に該当するか否かの確認義務があります。

昨年9月の能登豪雨災害でも「令和6年度緊急用務空域 公示第4号」において緊急用務空域が設定されました。

災害等が発生すると救難用のヘリコプター等の活動が活発となるためドローンの飛行は原則禁止となりました。航空法施行規則では、災害等が発生すると「緊急用務空域」を一時的に設定し、ドローンの飛行を規制します。設定状況はDIPSに記載されますので飛行前に必ず確認しなければなりません。

(飛行の禁止空域)
第236条の71 法第132条の85第一項第一号の国土交通省令で定める空域は、次のとおりとする。一 〜 三 省略
四 国土交通省、防衛省、警察庁、都道府県警察又は地方公共団体の消防機関その他の関係機関の使用する航空機のうち捜索、救助その他の緊急用務を行う航空機の飛行の安全を確保する必要があるものとして国土交通大臣が指定する空域(以下「緊急用務空域」という。)
五 省略
2 〜 3 省略
4 無人航空機を飛行させる者は、その飛行を開始する前に、当該無人航空機を飛行させる空域が緊急用務空域に該当するか否かの別を確認しなければならない。

引用:e-GOV「航空法施行規則」

なぜ確認する必要があるのか?

「緊急用務空域」とは、災害発生時や人命救助などを行う航空機(ヘリコプターなど)の活動を優先させるために設定される空域です。災害発生時や人命救助などに携わらないドローンの飛行は、厳しく制限されます。

災害発生時、ドローンが救助ヘリの航行を妨げると、人命に関わる重大な事態になりかねません。

許可なく緊急用空域で飛行した場合、航空法に基づく罰則の対象となる可能性があります。

「緊急用務空域」の飛行ルール

原則:「緊急用務空域」が設定された場合、事前の許可を得ていたとしても、飛行させることはできません。

例外:飛行の目的が「災害等の報道取材やインフラ点検・保守など、「緊急用務空域」の指定の変更又は解除を待たずして飛行させることが真に必要と認められる飛行」に限り、許可されることがあります。

(捜索、救助等のための特例)
第百三十二条の九十二 第百三十二条の八十五、第百三十二条の八十六(第一項を除く。)及び第百三十二条の八十七から第百三十二条の八十九までの規定は、都道府県警察その他の国土交通省令で定める者が航空機の事故その他の事故に際し捜索、救助その他の緊急性があるものとして国土交通省令で定める目的のために行う無人航空機の飛行については、適用しない。

引用:e-GOV「航空法」

まとめ

自主的な判断で「救助活動に役立つだろう」と飛行させるのは危険かつ違法行為となります。

ドローンを飛行させるためには、空港周辺、人口集中地区(DID)、夜間飛行など、多岐にわたる許可・承認が必要です。そして、これらの通常時の許可を取得していたとしても、「緊急用務空域」のルールは別途適用されます。

緊急用務空域が指定された場合、すべてのドローンは原則飛行できません。通常の飛行許可・承認も適用外

飛行開始前には、航空局ホームページ、X、DIPSで、必ず緊急用務空域に該当しないかを確認してください。(航空法施行規則の義務です)

緊急用務空域での無許可飛行は、人命救助活動を妨害し、航空法による罰則対象となります

「自分の業務は例外規定に該当するか?」「飛行許可を確実に取得したい」といった疑問があれば行政書士等の専門家にご相談ください。