場所等により他の特定飛行にも該当することがありますが、ドローンによる農薬散布は必ず航空法上、以下の2つの特定飛行に該当します。
危険物の輸送
農薬の定義: 航空法において、農薬は「危険物」として扱われます。農薬を搭載して飛行させる行為は「危険物の輸送」に該当し、国土交通大臣の承認が必須となります。
航空法
(爆発物等の輸送禁止)
第八十六条 爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれのある物件で国土交通省令で定めるものは、航空機で輸送してはならない。
2 省略
航空法施行規則
(輸送禁止の物件)
第百九十四条 法第八十六条第一項の国土交通省令で定める物件は、次に掲げるものとする。
一 〜 五 省略
六 毒物類 次に掲げるものをいう。
イ 毒物 人がその物質を吸入し、皮膚に接触し、又は体内に摂取した場合に強い毒作用又は刺激を受ける物質
ロ 省略
七 〜 十 省略
物件の投下
液体状の農薬であっても、それをドローンから空中へ散布する行為は「物件の投下」に該当します。散布行為に対しても国土交通大臣の承認が必須となります。
(10)物件投下の禁止
飛行中に無人航空機から物件を投下した場合には、地上の人等に危害をもたらすおそれがあるとともに、物件投下により機体のバランスを崩すなど無人航空機の適切な制御に支障をきたすおそれもあるため、 航空法第132条の86第2項第6号により、物件投下を禁止することとしたものである。ここで、水や農薬等の液体を散布する行為は物件投下に該当し、対象物件を地表等に落下させることなく地上の人員に受け渡す行為や輸送した物件を地表に置く行為は物件投下には該当しない。
引用:国交省ホームページ(無人航空機に係る規制の運用における解釈について)
物件投下(農薬散布)の許可基準
ドローンで農薬散布など「物件投下」を行う際に、航空法上の承認を得るために次の安全基準満たす必要があります。
1 機体の基準
不用意な投下防止: 物件(農薬など)が意図せず落ちてしまうような構造・機構であってはならない。
2 操縦者の基準
5回以上の物件投下訓練実績を有し、薬液の重さが変化する投下の前後で、機体を安定して制御できる能力があること。
3 安全確保体制の基準(補助者の配置と立入管理)
物件投下を実施する場所の安全を確保するため、原則として補助者の配置が必要です。
【原則】補助者の配置
飛行状況の監視: 飛行中、気象状況の変化などを監視し、操縦者に助言を行う補助者を配置すること。
立入防止の注意喚起: 投下場所に第三者が立ち入らないよう、注意喚起を行う補助者を配置すること。
【例外】補助者なしで投下する場合
補助者を配置せずに物件投下を行う場合は、以下の基準をすべて満たす必要があります。
・投下高度の制限: 原則として、投下時の高度を1m以下とすること。ただし、立入管理区画内に投下できることが実証済みであれば、この限りではありません。
・立入管理区画の設定: 投下する物件の特性(重量、大きさ)や機体の性能、速度、高度に応じて、第三者が立ち入らないための「立入管理区画」を明確に設定すること。
・立入防止対策の実施: 設定した立入管理区画の性質に応じて、飛行中に第三者が区画内に立ち入らないよう、具体的な対策(例:ロープ、コーン、看板の設置や監視カメラの利用など)を講じること。
まとめ
1 農薬散布は、航空法上の「危険物輸送」と「物件投下」の両方に必ず該当し、国土交通大臣の承認が必須。
2 操縦者は、薬液の重さ変化に対応するため5回以上の物件投下訓練実績が必要。
3 安全確保のため、原則として飛行状況監視と立入防止のための補助者配置が求められる。
4 補助者なしで散布する例外は、投下高度1m以下とし、第三者の立入を防ぐ立入管理区画の設定と対策が必要。
ドローンによる農薬散布は年々増加傾向であり、ドローンの事故等の8割近くが農薬散布によるものです。飛行のための許可等不明な点は、専門家に相談することをお勧めします。
ドローン農薬散布!航空法クイズ
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