義務と訓練で利用者の安心を確かなものに

 
予測不能な現代において、介護事業者が安定したサービスを提供し続けるためには、万が一の事態に備えることが極めて重要です。そのために不可欠なのが、BCP(事業継続計画)の策定と、それを実効性のあるものにするための訓練、そして介護事業者としての義務を果たすという意識です。

介護現場におけるBCPは、なぜ必要なのか?

BCPとは、自然災害(地震、台風、水害など)、感染症の流行(新型コロナウイルスなど)、システム障害など、介護サービス提供を阻害する緊急事態が発生した場合に、利用者の生命と安全を守りながら、可能な限りサービス提供を継続、または早期に再開させるための計画です。

「うちは大丈夫だろう」と考えるのは非常に危険です。介護サービスは、利用者の日常生活に深く関わるものです。その中断は、利用者の心身の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に、医療的ケアが必要な方や認知症の方など、脆弱な立場にある利用者には、サービスの中断は命に関わる事態になりかねません。

BCPがないことにより、緊急時に判断ができず、職員の混乱、利用者の安全確保の遅れ、そして最悪の場合、サービス提供の停止により、利用者の命に関わる事態に繋がりかねません。

BCPを実効性のあるものにする「訓練」の重要性

BCPを策定するだけでは不十分です。絵に描いた餅にならないよう、定期的な訓練が不可欠です。訓練を通じて、計画の不備や問題点が明確になり、改善点を洗い出すことができます。訓練の実施方法は様々ですが以下のような訓練が考えられます。

机上訓練: シナリオ(地震発生、感染症集団発生など)に基づいて、職員が役割を分担し、BCPの手順を確認します。利用者の避難経路、安否確認、物資の確保、外部機関との連携などを具体的にシミュレーションします。

避難訓練: 災害発生時の利用者の安全な避難誘導(車椅子の方や寝たきりの方の搬送方法を含む)、集合場所の確認、安否確認の方法などを実践します。

訓練を繰り返すことで、職員一人ひとりの危機管理意識が高まり、緊急時にも冷静かつ迅速に行動できるようになるでしょう。これは、利用者の安全と安心を確保する上で不可欠なプロセスです。

BCPは介護事業者が果たすべき「義務」

BCPの策定と訓練は、単なる推奨事項ではなく、2024年度から、全ての介護事業者にBCPの策定が義務化されました。これは、国として介護サービスの継続性を確保し、利用者の生命と生活を守る強い意思の表れです。

介護事業所には、利用者の生命と安全の確保、適切な介護サービスの提供、そして地域社会の一員としての役割を果たすという、重い義務があります。緊急時にサービスを継続できないと、これらの義務を放棄することに繋がりかねません。

義務化された以上、未策定の事業所は早急に対応し、既に策定済みの事業所も、定期的な見直しと訓練により、実効性を高める必要があります。