「遺言書を作りたいけど、何をしたらいいの?」「遺言書の種類は何を選べばいいのか分からない…」

そんな悩みはありませんか?

遺言は、あなたの「残された家族への最後のメッセージ」です。そして、「財産をめぐる争いを防ぐ最も有効な手段」でもあります。しかしながら、法律で定められた形式に従わないと無効になってしまう恐れもあります。

一般的に使われる遺言の種類(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)の作成方法から、費用、メリット・デメリットまでを解説し、あなたに最適な遺言書の選び方を提案します。

なぜ遺言書が必要なのか?

まず、不安に思う前に遺言書がなぜ大切なのかを理解しましょう。

家族間の争いの防止:遺言書がないと、残された家族で遺産分割の話し合いが必要になり、意見が対立し、トラブルに発展することがあります。遺言書があれば、基本的に遺言書の内容に従って遺産が分けられるため、無用なトラブルを防ぐことができます。

財産の分割を指定できる:法定相続分とは異なる割合で分けたい、法定相続人以外の人(内縁の妻等)に財産を遺したい、といったあなたの思いを反映することができます。

相続手続きを円滑に:遺言書があると、相続財産が整理されるため銀行口座の解約や不動産の名義変更といった相続手続きを、遺言書がない場合に比べてスムーズに進められることが多いです。

覚えておくべき遺言の3種類とその特徴

遺言には大きく分けて「普通の方式」と「特別の方式」がありますが、日常で作成されるのは「普通の方式」の遺言です。「普通の方式」には、以下の3種類があります。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
2 前項の公正証書は、公証人法(明治四十一年法律第五十三号)の定めるところにより作成するものとする。
3 第一項第一号の証人については、公証人法第三十条に規定する証人とみなして、同法の規定(同法第三十五条第三項の規定を除く。)を適用する。
(公正証書遺言の方式の特則)
第九百六十九条の二 省略
(秘密証書遺言)
第九百七十条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2 第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。

引用:e-GOV「民法」

簡単に要約すると以下のような特徴があります。

種類特徴作成の容易さ安全性
自筆証書遺言自分で手書きする遺言手軽低い(形式不備・紛失の危険あり)※
公正証書遺言公証人と承認が公証役場で作成する遺言手間が必要最も高い(原本を公証役場が保管)
秘密証書遺言内容を秘密にして、公証人と証人に存在を証明してもらう遺言やや手間が必要中程度(形式不備の危険あり)

※自筆証書遺言については、「法務局における遺言書保管制度」を利用すると、保管の安全性や死後の検認手続き(後述)が不要になるメリットがあります。

検認とは:遺言書を発見した相続人は,遺言者の死亡を知った後,遺言書を家庭裁判所に提出して、「検認」を請求しなければなりません。

種類別比較】メリット・デメリットと選び方

遺言書の種類について、さらに詳しく見ていきましょう。

メリットデメリットこんな人におすすめ
自筆証書遺言・費用が不要で、いつでもどこでも作成することができる。
・内容を誰にも知られずに作成できる。
・形式の不備があると無効になることがある(自筆で書く必要があり、厳格なルールがある)。
・紛失、盗難、改ざんの危険がある。
・家庭裁判所の「検認」が必要になり、相続人が手間と時間を取られる(法務局での保管制度を利用すれば不要)。
財産がシンプルで、手軽に作成したい方。
(法務局の保管制度の利用は強くおすすめします。)
公正証書遺言・公証人が作成するため、形式不備で無効になることは無い。
・原本が公証役場に保管されるため、紛失・改ざんの心配がない。
・家庭裁判所での「検認」手続きが不要。
・公証役場での手続きが必要で、作成に手間がかかる。
・証人2人が必要。
・費用が最もかかる(財産の額に応じて変動)。
自分の意思を確実に実現したい方、財産が複雑な方、相続人同士の仲が心配な方など、安心と安全を優先したい方。
秘密証書遺言・遺言の内容を誰にも知られずに作成できる。
・公証人が関与するため、遺言書の存在を証明できる。
・形式に不備があると無効になる危険がある(公証人は、内容を確認することができません)。
・家庭裁判所での「検認」が必要。
・紛失、破棄の危険がある。
内容を秘密にし、存在だけは公的に証明したいという特殊な方向けです。

まとめ

ほとんどの場合、確実な効力があり、死後の手続き負担が少ない「公正証書遺言」が最良の選択肢となり、費用を抑えたい場合は「自筆証書遺言(法務局の保管制度利用)」が有力な選択肢となります。

「自分の場合はどうすべきだろう?」と少しでも不安を感じたなら、後悔のない遺言書を作成するために、ぜひ一度、相続の専門家にご相談ください。