建設業法には、「著しく短い工期」に関する規定が設けられています。この規定の主旨は、建設業就業者の長時間労働を是正するために、適正な期間の設定を行う必要があり、通常認められる期間とくらべ短い期間を工期とする建設工事の請負契約を禁止するものです。

(著しく短い工期の禁止)

第十九条の五 注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。

建設業法における「著しく短い工期」には、明確な数値基準の定義はありません。

これは、工事の内容や規模、工法、人員によって、適切な工期が変動するため、建設業法では、単に定量的に短い期間を指すのではなく、以下の要因を総合的に考慮して判断されます。

著しく短い工期の判断基準

国土交通省の「工期に関する基準」や「建設業法令遵守ガイドライン」では、「通常必要と認められる期間」に比して著しく短いかどうかを判断するための具体的な要因が示されています。

以下の項目を十分に考慮せずに設定された工期は、「著しく短い工期」と見なされる可能性があります。

1. 労働時間と休日の確保

  • 時間外労働の上限に違反するような、違法な長時間労働を前提としていないか。
  • 週休2日など、適切な休日が確保されているか。

2. 自然要因と制約

  • 悪天等天候による不稼働日などが考慮されているか。
  • 近隣住民への配慮や、立地条件による制約が反映されているか。

3. 適正な見積もり

  • 元請負人が、下請負人から提示された適正な工期を考慮しているか。
  • 工事内容や投入する人員・資材の量を踏まえて、現実的な工期が設定されているか。

法律による規制の目的

「著しく短い工期」の禁止は、単なる法令遵守だけでなく、建設業で働く人々の長時間労働を是正し、工事の品質と安全性を確保することを最大の目的としています。無理な工期は、手抜き工事や労働災害の原因となるため、発注者と受注者が対等な立場で、適正な工期を設定することが求められています。