契約書は、ビジネスにおいて非常に重要な役割を果たします。特に、建設業における請負契約書は、単なる形式的な書類ではありません。これは、発注者と請負業者が、安心して工事を進めるために必要なものです。内容をあらかじめ書面でにすることで、請負代金、施工範囲等について、争いを防止するため作成するものです。
なぜ請負契約書が必要なの?
請負契約書は、将来起こりうるトラブルを未然に防ぐための「保険」のようなものです。
もし契約書がなければ、「言った」「言わない」の水掛け論になりがちです。口頭での約束は、記憶違いや解釈の違いが生じやすく、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。金銭や工期に関わる重要な約束が曖昧になり、双方に大きな不利益をもたらしかねません。
建設業法で定められた「義務」
建設業法では、すべての建設工事の請負契約において、書面での契約を義務付けています。
これは、発注者と請負業者の両方を保護するための、非常に重要なルールです。 契約書に記載すべき事項も細かく定められており、これらの事項を明確にすることで、トラブルの発生を抑制し、工事を円滑に進めることができます。
請負契約書に記載すべき主な事項
建設業法で定められた、請負契約書に記載すべき主要な項目は以下の15項目を満たす必要があり、契約の締結に当たっては、契約の内容となる一定の重要事項を明示した適正な契約書を作成し、下請工事着工前までに署名又は記名押印して相互に交付しなければなりません。
建築業法
(建設工事の請負契約の内容)
第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
一 工事内容
二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
四 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
五 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
六 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
七 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
八 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動又は変更に基づく工事内容の変更又は請負代金の額の変更及びその額の算定方法に関する定め
九 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
十 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
十一 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
十三 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
十四 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
十五 契約に関する紛争の解決方法
十六 その他国土交通省令で定める事項
現状16号は定められていないので15項目になります。
まとめ
請負契約書は、面倒な手続きのように感じるかもしれませんが、それはお互いを守るための「安心の証」です。建設業法というルールに基づいて、しっかりと契約書を交わすことで、発注者は安心して工事を任せることができ、請負業者は安心して工事に集中することができます。
大切な工事を成功させるためにも、請負契約書の作成と確認は、決して怠らないようにしましょう。